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#004 Album『flow』Video director Yoshiya Sato Interview

映像ディレクター サトウヨシヤ(NON-POLY、アーサーシートン(有)主宰)

インタヴュー・テキスト 黒須誠 撮影 ossie

 

 

昨年12月にリリースされたSwinging Popsicleのミニアルバム『flow』。このアルバムは現在Spotify(スポティファイ)やiTunes/Apple Musicといった音楽配信サービスでも聴けるが、パッケージには6本のミュージックビデオが納められたDVDもついている。

 

20年ものキャリアを誇る彼らだが映像作品をリリースするのは初めてだ。今や彼らの代表曲ともなった

「I just wanna kiss you」をはじめ、振り付けもあるダンサンブルな「Chocolate Soul Music」、しっとりとしたバラードの「Stay by my side」、彼らの中でも数少ないインスト曲の「Nothing's gonna change my world」、ライヴの盛り上がりには欠かせないアッパーなロックチューンの「rainbounds」、そしてエピローグとなる「SP-ZERO」である。

 

長年のファンはお気づきかと思うが、MVの大半は5thアルバム『Go on』に収録されている楽曲を使ったものであり、映像も当時撮影されたものが使われている。大半は海外ツアーで撮影された非常に貴重なもので、20周年を祝うメモリアルなタイミングでリリースされたことは大変喜ばしいと言えるだろう。筆者も拝見したが、普通のMVとは違い、まるでメンバーと一緒に旅に出ているかのような、はたまたロードムービーを見ているかのようなそんな気持ちにさせてくれる作品であった。

 

今回取材したサトウヨシヤさんは、今はソロ活動やNON-POLYという音楽ユニットをやっているミュージシャンで、メンバーとも親交の深い方だ。そんなミュージシャンの彼が今回初めてメガホンを取り作ったのが「I just wanna kiss you」を除く5本のMVである。

 

サトウさんは文字や言葉に対するこだわりが人一倍強いミュージシャンだ。筆者は彼が過去にリリースした作品を何枚か聴いているし、近年のライヴはほぼ全部見ている。イマドキ珍しい散文詩のような詞を書いて歌う様子は、他にはないとても新鮮かつ稀有なもので、彼の発する言葉の一つ一つが聴き手の心の奥に何かのひっかかりを持たせる。余談だが彼の作品でいえば、ソロアルバム『目を閉じることを忘れてしまった』に収録されている「ジェットコースター」や「2月の革命」はオススメなので、もし機会あれば聴いてもらえたらと思う。iTunes等で買えるはずだ。

 

取材ではミュージシャンである彼が映像作品を作ることになったきっかけや、制作意図、そして彼の音楽や映像に関する想いを伺った。本インタヴューがミニアルバム『flow』を楽しむきっかけになれば幸いである。

 

 

僕から映像を撮らせてほしいと頼んだのがはじまりです

●はじめにサトウさんとメンバーの出会いから教えてください。

 

サトウヨシヤ 「まず僕は若いころあるバンドのローディーをやっていて、その関係で新宿LOFTに出入りするようになったんです。それから自分でも昼の部から夜にかけてLOFTでライブをやったり、アコースティックホリデーって言うイベントをやったりしてて。そこに平田君が店員で入ってきて、話をするようになったんです。確かフェアグラウンド・アトラクションの話で盛り上がったのかな。その後僕のやっていたバンド[the Zulu(ザ・ズール)]で平田君にベースを弾いてもらって。で、そのバンドは7人編成だったんだけど、コーラスの女の子が二人いて、そのうちの一人が辞めることになって。そこに平田君が連れてきてくれたのが同じ大学サークルの美音子さんだった。その後しばらくして美音子さんと嶋田君ともう一人ベースの女性が出会ってはじめたのがポプシクルの前身バンド。その初ライヴをLOFTに観に行って嶋田君と出会って・・・その後平田君がそのバンドに加入してポプシクルになったんです。間違っていたらゴメンね。でもそんな流れです」

 

●メンバーと出会ってから20年以上経っているんですね。

 

サトウ 「そういうことになりますね。松岡モトキさんとポプシクルの対談記事も読んだけど、松岡さんも昔新宿LOFTで働いていたし、昔の移転前の西新宿のLOFTが一つのきっかけになったことは確かですね」

 

●メンバーとはどのように関わってきたんですか?

 

サトウ 「もちろん友達のバンドとして観に行ったり、たまにバンドのサポートとして手伝ったり、イベントのときにスタッフをやったりとそんな感じです。韓国へ行ったときにはセカンドギター兼スタッフをしたり。でも僕は基本ギタリストじゃないから、プレイがラフすぎてもう呼ばれたりしないけど(笑)。それからアメリカ・メキシコ遠征のときにもカメラマン兼スタッフとして同行したり・・・要は近しい音楽仲間として色々と手伝ってきた、そんな感じですね。そう言えばZeppet Storeの木村君とポプシクルと僕のスリーマンで一緒に九州遠征へ行ったこともあったな」

 

●サトウさんは彼らのアルバム『flow』に収録されたミュージックビデオ(以下、MV)を作られたわけですが、これはメンバーから依頼があったのでしょうか?

 

サトウ 「いや、そうではなくてね。10年ほど前にポプシクルが海外ツアーを頻繁にやっていたでしょ? そのときに僕から映像を撮らせてほしいと頼んだのがはじまりです。そのとき話したのは、勝手に映像を撮らせてもらって編集するからそれを見て気に入ったら使ってくれと、気に入らなかったらボツでもいいからと。それでツアーに同行して撮って作らせてもらったのが今回の作品なんですよ。当時、作った映像をメンバーに見せたら“いいんじゃない?”という話になってね、じゃあどうしようかと。ただYouTubeで単に公開するのは嫌だったんですよね。作品である以上はちゃんとしかるべきところで形にして販売したいなと思っていたから。それでメンバーとどのタイミングで出すのがいいのかあれこれ考えているうちに、機会がないまま10何年経ってしまったんですよね。宙ぶらりんになっていたというか・・・。昭和の男だから作品を無料で配布するのに抵抗があった(笑)。でも昨年ポプシクルが結成20周年を迎えてリリースもあると聞いたので、だったらこのタイミングで出してもう終わらせようと。まあその前に一部をライヴ会場限定で少しだけ販売してはいたんだけど」

 

●10数年前、映像作品を作りたいと思われたとのことですが、きっかけは何だったんですか?

 

サトウ 「もともと映画が好きだったこともあるんだけど、当時知り合いからパナソニックのカメラを無償レンタルで使わせてもらう機会があって。これ当時のカタログなんだけど、ソニーのビデオカメラがテレビ業界を席巻してるときにパナソニックにもそういうカメラがあるってことで。それでこのカメラを海外に持って行って撮影をしたんです」

●これ業務用のカメラですね。家庭用で売られているものじゃない。

 

サトウ 「そうそう、業務用ですね。要は音楽がパソコンで作れるようになったのと同じで、映像もパソコン1台で編集できる時代になったから僕にもできるんじゃないかと思って。それでこのカメラとファイナルカット(※1)という映像編集ソフトを使って作り始めたんですよ」

 

※1 Final Cut(ファイナルカット)は、マッキントッシュやiPhoneなどでお馴染みのアップルが開発しているノンリニアビデオ編集を目的としたプロフェッショナル向け映像ソフト

●映画はいつごろから?

 

サトウ 「僕は中野で生まれて育ちが調布なんだけど、調布って映画の会社がたくさんある街なんです。撮影所とか現像所とか映画事務所とか。それこそ子供のころはフェンスの向こう側で撮影しているのをずっと見ていたりしていた。だからいつか映画に関わる仕事をしたいなと思ってはいたんだけど、音楽にのめりこんじゃって(笑)。黒須さんは僕の色んな音楽作品を知っているからわかると思うんですけど、僕は一曲が短編映画みたいな音楽をずっと作り続けていて。リアルな純文学ではなくリアルなフィクションの世界を、物語性のある歌詞と演出のための音で表現するような。いつかそれを映像でやってみたかったんですね」

 

●普段はどんな映画を見られるんですか?

 

サトウ 「古今東西ジャンルを問わず何でも見るけど、S.F.で一番衝撃を受けたのは『2001年宇宙の旅』かな。詩的でいて圧巻の映像美。それからアキ・カウリスマキやジム・ジャームッシュといった、カラカラ乾いたオフビートな、映像美を感じる作品も好き。DVDに収録している[SP-ZERO]という作品はそんなオフビート映画を意識してどこまでカッコつけられるかに挑戦、ってことで作ってみたんです。もちろんハリウッド映画も見ますよ。地球滅亡物、戦争物、飛行機パニック物、銀行強盗と詐欺師物なんてほとんど見てる。暇だよね(笑)。でもねSTAR WARSのようにキャラクターが出てくる作品は苦手なんです。なんか冷めちゃう。だからジブリ映画を観たことがないんだけど、それを言うと人に驚かれる(笑)」

 

●ジブリは日本人なら全員観ていそうな雰囲気ありますからね(笑)。学校でも話題になるし。

 

サトウ 「まず学校で話題なる歳じゃないです(笑)。僕らのころは誰もアニメの話なんてしていなかった。クラスに数人アラレちゃんのキュイーンみたいなことを言っているグループがあったけど。今思えばあのグループは今のハシリだね(笑)。でもね、そうは言っても、宮崎監督の映画製作のドキュメンタリーなどは全部観ているんですよ。表現魂も、言っている事も素晴らしいと思う。どうしてもアニメやキャラクターが出てくるとダメで。昔はカルピス劇場とか観てたのにね。でも最近はアニメも邦画も最新パキパキ映像も頑張って観ようと心がけるようにしています(笑)」

advantage Lucy

作品ごとに何かこれというものは全く決めてなかったです

●なるほど、わかりました。今回のDVDでは「I just wanna kiss you」以外の5作品を手がけられていますが、全体のコンセプトなどはあったのですか?

 

サトウ 「作品ごとに何かこれというものは全く決めてなかったです。さっきも言ったようにツアーに同行させてもらい、まずは素材をひたすら撮って。その素材から楽曲ごとに合いそうなシーンをさらにひたすら選んで編集していく。ただ[Chocolate Soul Music]は下北沢440でのライヴ映像をベースにしていて、あの曲はポプシクルでも珍しくふりつけのある歌だったから、メンバーもライヴをベースにPVを作ったらいいんじゃないかって話していて。ちなみに冒頭の美音子さんがゆっくり踊っている画は、たまたま彼女がホテルでやっていた太極拳の様子を隠し撮った画なんだけど、これは『地獄の黙示録(※)』のオープニングの感じを取り入れました。“踊り”つながりってことで(笑)」

 

※2 地獄の黙示録(原題:Apocalypse Now)は1979年にアメリカで公開された映画。ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』が原作で監督はフランシス・フォード・コッポラ。1979年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドール賞、アカデミー賞でも撮影賞と音響賞を受賞した

 

●なるほど、つまり後づけってことなんですね。でも「Stay by my side」では“STAY”と書かれたシーンが出てきますし、メンバーの座っているシーンもたくさん登場するので、撮るときにストーリーを考えられていたのかと思っていました。

 

サトウ 「あれは嶋田君が偶然“STAY”と書いていたものを持っていたのを映像で収めていたのが一つの決め手ですよね。撮っているときはどの曲で使う素材かはわからないわけだから。あと階段をぐるぐる降りていく様子なんかはメンバーに頼んで撮らせてもらったりはしていました。要は素材を集める必要があったから、その都度メンバーに色々やってもらったんですよ」

 

●映像にはビートルズのジャケットでもお馴染み、イギリスのアビイ・ロードのような横断歩道のシーンも出てきますよね(笑)

 

サトウ 「あれも、メンバーに頼んでやってもらったんです。あのシーンを撮ったのはニューヨークで、やっぱダコタハウスも近いしアメリカだけど、とりあえず即興でお約束的な(笑)」

 

●「Nothing‘s Gonna Change My World」も食べ物がたくさん出てきて、大変面白い映像になっています。またこの曲の映像には地名もたくさん入っているんですよね。

 

サトウ 「これは色々素材を消費していくと食べるシーンがどんどん余っていくんですよ。だからもったいないからそれだけを使った映像を作ろうと。旅行記っぽいイメージも持たせたかったし。なにより僕自身が飲食にも関わっているので。やはり何か足跡を残さなければと(笑)。それで旅行記だとしたらインストの曲がいいかなと思って、完全にインストルメンタルな曲ではないけれども、それに近いNothing~にさせてもらいました。でもこれは僕の中ではメンバーから作品としてのオッケーは出ないと思ったから、それこそ最後はYouTube行きかな、と思ってました」

 

●「rainbounds」についても何かあれば。

 

サトウ 「この曲、実はMVをメンバーに見せたところ、美音子さんから曲のイメージと少し違うと言われたんです。だから作り直そうか迷ったんだけど、曲のコンセプトとは少し異なってはいるものの、他の二人がカッコイイと言ってくれたこともあって、雰囲気は変えず美音子さん監修のもと細かいところを大幅に手直ししてどうにか締め切りギリギリで完成にこぎつけました」

 

●最後に「SP-ZERO」なんですけど、これだけはいわゆるMVとも違って短編映画のエピローグのような作品になっていますよね。

 

サトウ 「これはね、僕の初作品です。編集ソフトの勉強がてら色んなことを先に覚えておきたかったので、字幕やエンドロール、ナレーション、効果音などが満載なんです。制作工程としてはまずテキストを先に書いたんです。そしてそれに合う映像を探し、はめ込んでいき、と言う流れです。たまたまアルバムの『flow』にも合っていると思うんだけど、バンドが旅していく様子、美音子さんが歌を探す旅に出ていくような雰囲気を文字と映像で表現したかったんです。物語というよりかは詩の世界に近いと思う。詩は好きですから」

advantage Lucy

●元の映像は何時間くらい撮ったんですか? また編集も相当大変だったのでは?

 

サトウ 「うーん、当時のテープで30本以上は撮ったから、延べ30時間から40時間程度じゃないですかね。それ以上に編集が大変だったんですけどね。ただ細切れに時間をかけてやっていたから、どれくらい費やしたかは全くわからないな。作業を優先しすぎて通常生活が送れなくなる、くらいかな(笑)」

 

●編集の際に苦労されたことは?

 

サトウ 「やっぱり歌を中心に動きですよね。動きに合わせて作るのがすごく大変。ライヴ映像ではないこともあって、音に映像を同期させていく作業は思っていた以上に大変で、それに尽きるかな。作っては都度メンバーに確認してもらったんだけど、口や身体の動きが合っていない部分については何度も徹夜してやり直しました。ちなみに[afterglow]もほぼできている映像があるんですよ」

 

●それはリスナーも見たい人が多いと思いますよ。ポプシクルにとっても定番の曲ですから。

 

サトウ 「まだ完成はしていないんだけどね。権利関係の都合で『flow』には間に合わなかったんですよ」

 

●それはいつかぜひ見たいですね。

 

サトウ 「あ~でも動き編集が大変かも(笑)でもこの曲を作るきっかけは昔からのポプシクルの名曲ってのもあるんだけど、一度歌詞の意味を美音子さんに聞いたら自分の想像を超える内容で。今まで僕は誰の曲でも英詩の中身ってけっこうスルーしてたんだけど、そんな曲なのか!と衝撃を受け(笑)それで作りたくなっちゃった。だからその歌詞が散りばめられてます。雰囲気は大人っぽい、あ、もう大人かみんな(笑)、そんな感じです。」

今回のMVの作り方ってNON-POLYの音楽の作り方と同じなんですよ

●サトウさんにとって初めての映像作品ということですが、それがいきなり商業作品になったということもあり相当苦労されたのではないでしょうか?

 

サトウ 「そうですね、独学でやっていたというのもあるからは最終工程の工場納品時のアウトプットはよくわからなかったです。画像の比率がバラバラになってたり。正直今でもよくわからないです(笑)。ただ編集に使ったツールは、音楽を作るときに使っているPro Toolsにわりと似ていたから、そんなに難しくはなかったですよ。もちろん中身は違うんだけど、編集の切って貼っての感覚は似たようなものだったから。自分的にも最初から複雑なことは出来ないだろうから、効果的なものは全て素材で雰囲気物を撮っておいて、それをライン上で重ねてどうにかしました。たぶんこれからもその作戦でやります。そっちの方が好きだし(笑)」

 

●編集の視点ではどうでしょう?

 

サトウ 「編集好きなんですよ。だから大変だけど面白い。気にするのはやっぱり曲ですね。楽曲のイメージを大事にしたかったからとにかく曲を聴いてそこからイメージできるかどうかですよね。イメージができたら早く作れるけど、そうでないと全くできないし。逆に言えばイメージができたものから作っていった感じです。もうさすがに過去の素材は使い切ったけど(笑)」

 

●なるほど・・・ただコンセプトがあって映像を撮ったわけではない、編集ありきの映像作品を作るのは逆に難しいと思うんですよ。

 

サトウ 「今、話していて思ったんだけど今回のMVの作り方ってNON-POLYの音楽の作り方と同じなんですよ」

 

●と言いますと?

 

サトウ 「普通は曲があって、それをそのまま録音するんだけど、NON-POLYは違っていて、何もないところからレコーディングが始まるんです。例えばリズムとギターのリフだけを録って、そこに色んな音を重ねたり切ったり貼ったりして作っていく。それと似た感じですね。たくさんの素材があってそれを並べていって一つの作品にするっていうところがね。ちょっと違うかもしれないけど料理で言えば冷蔵庫の残り物でいかに美味しく作るか、みたいな(笑)」

 

●偶然とはいえ、面白いですね。作家性が出るというか・・・一番苦労されたところは?

 

サトウ 「これは偶然でなく必然ですね。ある意味僕の性と言うか。フォームを形取ることが苦手で。一発勝負気質と言うか(笑)。もちろん最初から曲とプロットありきで作る方が楽かもしれないけど、マジックが生まれにくい。スリルも無い。僕はこのマジックを音楽レコーディングでも映像制作でも料理(笑)でも信じてるんですね。インプロ感覚(※3)の極みみたいな。で、苦労した点ですね。うーん・・・メンバーのディレクションにいかに応えるか・・・ですね(笑)。ある素材を組み合わせて何か作っていくということは、元の映像をそのままの尺で使うことができないってことなんですよ。口の動きを合わせる、リズムと合わせるためにスピードを調整するといったことから、あれこれ切って貼ってをひたすら繰り返して作り上げていくのって本当に膨大な作業だし、なによりそれによって全体のイメージが崩れてくる場合がある。だけどそれは絶対してはいけない。一番やばいパターン(笑)。その中でどう折り合いをつけていくか。僕の技術が未熟なものでやっぱり時間がかかりました。ライヴ映像だったらドンカマ(※4)入れて基本撮ったものを組み合わせるだけだけど、そうじゃないから。ただメンバーのディレクションを受ける中で、操作も覚えるし勉強にもなったからそれはとってもよかったんですけど」 

 

※3 インプロとは台本や事前に打ち合わせなどをせずに即興で何かを作っていくこと

※4 ドンカマとは音の録音・編集の際に使うガイドとなるリズムのことを指す

advantage Lucy

メンバーのオフショットが満載なので、楽しんでもらえたらと思います

●初めて作った映像作品を改めて観てどう思われます?

 

サトウ 「あえて言うならば、エフェクトを少し多用しすぎたかもしれないな、というのはありますね。音楽でも写真でもなんでもそうだと思うんだけど、素材を生かすためには、映像効果を“使う”という意識ではなくて“補正する”といった感覚でやるくらいがちょうどよかった気がする。映像に関していうと最初からイジると純度が落ちるという感じがあるというか。今回の映像の色味については撮るときにカメラ側で予め作りこんでやっていたんですよ。でも今から思い返してみたら、映像はフラットに撮っておいて、ソフトで味付けをするといったやり方にしてもよかったとは思います。ミュージシャンの皆さんにわかりやすく言えば、方向も決まっていないのに猛烈にかけ録りしちゃった、みたいな(笑)。着地点が野生の勘でわかってるNON-POLYだといつもそんな感じなので、その感覚でやっちゃったところが反省です。まあ技術的なことについては色々あるので、それは次回作に反映したいですね」

 

●ちなみに、音楽を作るときと比べて何か違いを感じましたか?

 

サトウ 「やっているときの感覚はどちらも変わらないと思います。ただバンドだと、自分がいて相手がいてそのやりとりで作っていくけれど、映像編集は一人でやっていたからある意味楽だった部分はあります。好きに出来るから。それより映画って総合芸術って言われているけど、映像、言葉、音が一体となる、その一端が今回よくわかった気がしますね。情報量がめちゃくちゃ多いです。だからこそやり過ぎは禁物かと」

 

●ミュージシャンとしての在り方と映像ディレクターとしての在り方では大分意識も変わるのかなと思っていたんですけど。

 

サトウ 「変わらないですよ。映像も音楽も料理も同じ物作りですから。ただ僕はミュージシャンとしてはひとつコンプレックスがあるんです。それは何かっていうと“音楽の初期衝動”と出会わなかったってことなんです。例えば“パンクを聴いて衝撃を受けた!”とか“テクノを聴いてこの音楽すごい!”とか“昔この音楽が大好きでそんな風になりたかったから似たようなそれ目指してます!”といったことが皆無なんですね」

 

●”ない”ことがコンプレックスなんですか?

 

サトウ 「そう、コンプレックスというか自分にはそういうのが無いんだなーって言うくらいですけどね。周りは大抵そういうのを持って音楽をやっているから。多分僕の場合は表現を固定されずそれが音楽でも、映像でも、料理でも、書いたことない小説でも、納得いけば何でもいいんだろうな、きっと。だからミュージシャン友達で今まで本気で真に映画や小説の話出来る人ってごくわずかです。いやでもそれはそれでいいんですよ、別に。僕自身が何屋かよくわからないですから(笑)」

 

●今後ご自身作品でも映像を作っていくのでしょうか?

 

サトウ 「現在NON-POLYでもレコーディング中ですので一曲でき来たらその都度映像と共に配信、みたいなことはやっていきたいとは思っています。ただ、自分の作品となるといくらでも作りこむことができるので、完成させるのが難しいかもしれない。またもや永遠にやってそう(笑)。他人の作品だとメンバーが判断してくれるし、制約もあるからある意味楽です。最新だと一緒にレコーディングスタジオをやっていた友人のMVを作ることになりました。でももうさすがに機材が古いものでデジタル仕様に一新するかもなんで、また一から覚えなおしかも(笑)」

 

●今回の映像作品を見て普通のMVとは全く違うなと感じたのですがその理由がよくわかりました。MVの多くは曲名や曲のコンセプトに合わせて映像が作られているんですけど、編集であとから作られたものだったからなんですね。

 

サトウ 「そうですね、でももうこれはその作り手次第です。世界観は各それぞれありますし、ある意味違いとかはあってないようなもので。良いも悪いも。で、それが世間的に、時代的に、好み的に、オッケーかどうか? そこにマジックはあったのか? だし、昔から創作の世界はそんな感じです。なので僕はリリース出来たこと自体がラッキーだと思っています。これもメンバーのおかげです(笑)」

 

●今後について何かあれば

 

サトウ 「やっぱり映画には何らかの形で関わってみたいなというのがありますね。可能性は低いけど多分一番現実味があるのは自分の音楽が使われることくらいかな。自分が映画を撮るといった壮大な妄想もあるけど(笑)」

 

●最後になりますが、リスナーの方にメッセージをお願いします。

 

サトウ 「今回の映像はメンバーのオフショットが満載なので、楽しんでもらえたらと思います。偉そうなことをつらつら言いましたが、作り手としてはそれが最高の願いです。今後もポプシクルをよろしくお願いします!」

●本日はありがとうございました。

 

〈サトウヨシヤ プロフィール〉

1991年CROWNよりミニアルバム「STOUT,,,(with Caramel Cream)」を初リリース。
沈黙の90年代前半をバンド「the zulu」でディープに駆け抜けた後も「NON-POLY」(サウンドエンジニア&ミュージシャンの杉山オサムとのユニット)やソロ「サトウヨシヤ」など一貫して「映像が見えるような言葉と音」を常に考えてきた、基本ミュージシャン。
ひとつの曲が一編の映画のように感じてもらえるような言葉、音を使いオブラートに包んではリアルに投げかける反復の連続で表現。04年には坂本龍一が率いた復活第1弾コンピレーションアルバム「GUT +1」や映画ROCKERSの劇中歌、サウンドトラックに参加。これまでに10枚の作品を発表・リリースしている。最新作は08年にリリースしたソロアルバム「目を閉じることを忘れてしまった」。ライヴも不定期ではあるが継続して行っているほか、近年は映像制作なども手がけている。今年6/10には藤島美音子非公認ユニット、Antastick Moha Bandで三曲入りシングルをSLOVAKIA RECORDSからリリース。

2016年6月12日掲載

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